家庭菜園で使っていた化成肥料の袋を見たら、14-10-13(チッソ14・リンサン10・カリ13)と書かれています。家庭菜園のビギナー向けの本などには、チッソ・リンサン・カリが同じ割合で含まれている(例えば14-14-14とか8-8-8とか)の化成肥料が使いやすいと書かれていることが多いような?
このところ、化学肥料がめちゃくちゃ値上がり(原料が輸入だから~)いるので、手持ちの肥料を活用する方法を探ってみました。植物が吸収しきれないほどまくのは避けたいですしね。
本ページはプロモーションが含まれています。
チッソ・リンサン・カリ(三要素)
この14とか8とかというのは100gあたりに含まれる量をあらわしています。
14-14-14は100gあたりチッソ・リンサン・カリがそれぞれ14g含まれているという意味です。
- チッソ(チッソ質肥料)
からだのタンパク質をつくる材料。おもに葉や茎を育てるので「葉肥」といわれる。
畑では、微生物の働きによって硝酸イオン(硝酸態チッソ)に変わり、作物は養分として根から吸収する。
たくさんの量が必要とされる肥料の基本となる成分。
- リンサン(リン酸質肥料)
細胞の構成要素で、作物の生長を早めるはたらきがある。
水に溶けないので、土に混ぜても動かない。作物は伸ばした根から根酸をだして、リン酸を溶かして吸収する。
アルミニウムやカルシウムと結びつきやすいので、ばらばらと土にまいたりしない。根の伸びる位置に厚めにまく、堆肥やボカシ肥に包むなど、土と直接触れないようにする。
リンサンは土のなかで移動しないので、元肥で全量をあたえるのが基本。
元肥には過リン酸石灰(過石)が適しており、堆肥にくるんであたえると作物が吸収しやすい。 - カリ(カリ質肥料)
細胞を丈夫にする。すぐに効果があらわれる水溶性のカリ質肥料が肥料にはよく使われる。
元肥と追肥のどちらにも使われる。土壌中で容易に移動し、雨に流れてやすい。(粘土などでは吸着されるので、雨に流されにくくなる。)
三要素の次に大事なのが、カルシウム(石灰質肥料)、マグネシウム(苦土肥料)、イオウです。
野菜が必要とする三要素(目安量)
家庭菜園の定番野菜、というか私がつくる野菜の肥料を拾ってみました。
手持ちの14-10-13(谷型)を使う場合、ほとんどの野菜でリンサンが足りなく、追肥ではリンサンが無駄になるようです。
藤原俊六郎著『されでもできる肥料の上手な効かせ方』農文協、2008年
作物名 元肥 追肥 最適pH 重点時期 施肥のポイント トマト 15-25-15 10-6-8 6.0~6.5 全期 元肥は緩効性肥料を
追肥は数回に分けるミディトマト 10-20-10 5-0-5 6.0~6.5 中後期 同上 ミニトマト 14-18-18 8-4-6 6.0~6.5 全期 同上 ナス 17-24-20 25-15-18 6.0~6.8 中後期 肥料を切らさない
初期のチッソ過多は落花、過繁茂、苦土石灰欠乏がでやすいピーマン 15-25-15 15-3-15 6.0~6.5 全期 肥料が多く必要
追肥は数回に分けるキュウリ 25-30-25 15-0-15 6.0~6.5 全期 追肥はこまめに サヤインゲン 18-27-17 14-5-13 6.0~6.5 中後期 初期は肥料障害あり
追肥は収穫はじめ
いちどに多量の追肥はしないスナップエンドウ 7-15-8 3-0-4 6.5~7.0 中後期 リン酸欠乏に弱い オクラ 10-20-10 10-3-10 6.0~6.5 中後期 開花のころから追肥 小玉スイカ 3-27-5 10-6-8 6.0~6.5 中後期 マルチ栽培のため元肥重点
緩効性肥料を使用ネギ 6-18-6 21-21-21 6.0~6.5 追肥重点 肥料不足は生育不良
元肥は緩効性ダイコン 10-15-10 5-0-5 5.5~6.8 追肥重点 チッソが多すぎると茎葉が繁茂
多肥は岐根になりやすい
少ないと肥大がわるいカブ 15-20-15 – 5.5~6.5 元肥追肥分散 初期の生育が重要
地上部が生育して根ができるコマツナ 15-10-15 – 5.5~6.5 元肥重点 元肥は速効性 ホウレンソウ 15-10-15 – 6.3~7.0 全期 元肥は速効性 ジャガイモ 14-14-12 – 5.0~6.5 元肥重点 pHが高いと病気になりやすい サツマイモ 3-10-10 – 6.0 初期少肥後期重点 初期チッソが多いとつるぼけ
養分吸収力が強い
未熟堆肥は害虫発生元肥と追肥の量はグラム/平方メートル
化成肥料14-10-13(谷型)をベースにして、足りない肥料を単肥で補うのが、手持ちを有効活用できて無駄が少なそうです。
こんなものがある三要素の単肥
チッソ・リンサン・カリ(三要素)の単肥にはこんなものがあります。
- チッソ質肥料
・硫安(アンモニア態):代表的なチッソ質肥料で、アンモニア態チッソを21%含むものが多い。気温が低いと効きが悪い。
・尿素:比較的ゆっくりと効く。チッソを46%含むものが多い。
・硝安(硝酸態+アンモニア態):チッソ成分32%ものが多い。硝酸態チッソとアンモニア態チッソの両方を含む。 - リン酸質肥料
・過リン酸石灰(過石):水溶性リンサンを多く含む速効性肥料(副成分は硫酸カルシウム)。水に溶かした過石水を葉面に散布してもよい。
・熔成リン肥(ようりん):低pH土壌やアルミニウムが多い火山灰土壌を改良する効果もある。
・重焼リン:水溶性リン酸とク水溶性リン酸を含み、生育期から後期まで効果が継続する。 - カリ質肥料
・塩化カリ:水溶性で効きやすいが、塩素を含んでいるので、土壌を酸性化する作用がある。
・硫酸カリ:水溶性だが、気温が低いと溶けにくく、効きが悪くなる。
今回参考にしたのが、農学博士が監修した『肥料と土つくりの絵本3 化学肥料を生かそう(そだててあそぼう)』です。
“絵本”なのですが、植物がどのように肥料を吸収しているのか、肥料を効かせるポイントなどが科学的な視点で書かれています。
チッソは葉肥、リンサンは実肥、カリは根肥というのをよく目にしますが、この本ではチッソを葉肥と書いているのに、リンサンとカリは書かれていません。言い切れない(単純化できない)理由がきっとあるのでしょう。
<参考>
*1.藤原俊六郎著『だれでもできる肥料の上手な効かせ方』農文協、2008年
*2.加藤哲郎著『図解家庭園芸 用土と肥料の選び方・使い方』農文協、2010年