根っこから抜いたはずなのに、しばらくするとまた再生してくる雑草は本当に困りものですね。
一度根付くと取り除くのが特に難しいのが、多年生雑草です。草刈機で地上部を刈り取っても、地際や地下部から繁殖を続ける非常に頑固で手ごわい雑草です。
数年間にわたってトライ&エラーを繰り返した経験から、最も効果が上がる草刈り時期や除草剤の撒き方をご紹介します。
雑草には一年草と多年草がある
翌シーズンも花を楽しむことができる宿根草(多年草)が人気ですが、雑草にも1シーズンで枯れる一年草と翌シーズンも芽をだす多年草があります。
一年生雑草(一年草)
種子が発芽して枯れるサイクルを繰り返す雑草のことで、1サイクルを1年で終えるものを一年草とよびます。1サイクルに1年以上かかる二年草もありますが、種類は多くありません。翌年の春に開花するものを越年草とよぶこともあります。
うちの庭では、春はカラスノエンドウ、イヌノフグリ、ハハコグサなど。
夏はメヒシバ、コニシキソウ、スベリヒユなどをよく見ます。ハキダメギクは一年中見ます。
多年生雑草(多年草)
一度発芽して生長すると、毎年花を咲かせます。
多年生雑草は地下茎や球根でも増えるので、地上に出ている花や葉を取り除いてもまた生長します。手強い多年生雑草も光合成に必要な地上部を刈り取ることで、成長を抑制することができます。
うちの庭でカタバミ、ハマスゲ、ジシバリをよく見ます。
増えるのを許してしまうと取り除くのにものすごく手間がかかるのがこの多年生雑草です。
まとめ
まめに草取りをしても、翌年また芽を出してがっかりさせられる雑草の多くは、多年生雑草です。
一年生雑草 | 発芽→生長→開花→枯死までが1年以内に完結する | カラスノエンドウ、イヌノフグリ、ハハコグサ、メヒシバ、コニシキソウ、スベリヒユなど |
多年生雑草 | 地上部が枯れても地下部は枯れずに残り、毎年芽を出す | カタバミ、ハマスゲ、ジシバリ、ドクダミ、ヨモギ、ヤブガラシなど |
多年生雑草対策は“根っこ”を叩く
多年生雑草が“しぶとい”理由と対策
多年生雑草は、土を掘り返して地下茎や球根を取り除いても、根の途中で切れてちぎれてしまうので、完全に取り除くことは困難で、取り残した部分からまた生長をはじめます。
このようにしつこい多年草ですが、光合成に必要な地上部を刈り取ることで光合成を妨げ、生長を抑制することができます。地上に出ている葉や茎を刈り取り続けることで、やがて地下茎や球根も小さくなり、生長する力が弱まります。
地上部を刈り取ることで種子ができるのを防ぐこともできます。
次に草刈りによる多年生雑草対策や効果的な除草剤をご紹介します。
多年生雑草を取り去るには、地下にある根茎を叩くことがポイントです。
「草刈り」で光合成の邪魔をする
多年生雑草の地上部(茎や葉)を地際で刈り取っても、しばらくすると再び生えてきますが、草刈りの頻度はできるだけ減らしたいところです。
多年生雑草の刈り取り時期と方法
草刈りを年2回と仮定して地上部と地下部のバランスを考慮すると、次のタイミングが効果的であるとされています。*1
- 蓄積した栄養分(糖分)が地下部に移行し始める7月下旬~8月ごろ。
この時期に刈り取ることで、地上部が蓄えた栄養が失われるだけでなく、新たな芽の成長に地下部の栄養が必要になります。多くの多年生雑草は7月下旬~8月ごろですが、スギナはもっと早い時期です。
地上部(茎や葉)が大きく成長する時期(栄養転換期直前)
- 地上部から地下部への養分(糖)の移行が盛んになると推定される10月下旬~11月にかけて。
地上部が生長するのをやめて老化しつつある時期(生長停止直後)
私はいつも9月末に最後の草刈りをして「終わった感」に浸っていますがが、来年は最後の1回をもう少し遅らせるように間隔を調整してもよいかもしれません。
「除草剤」で枯らす&芽が出るのを抑える
地下部が発達している多年生雑草を抑制するには、除草剤の力を借りる必要があります。
しかし、除草剤を撒くには手間やコストがかかるため、できるだけ効率的に行うことが重要です。
最適な薬剤を選び、撒き方を工夫することで手間とコストを最小限に抑えることができます。
茎葉処理剤
すでに伸びている葉や茎に散布することで雑草を枯らします。
地上部の量(葉の面積)が最大のとき、薬剤の吸収量が最大になります。
さらに、光合成物質(糖)の地下部への移行が最大のとき、薬剤の移行も最大化します。
したがって、ラウンドアップマックスロード(グリホサート)をはじめとする吸収移行型除草剤を撒くのは、葉が大きく生長した時期が最適です。
地上部の生育時期に撒くと葉や茎が枯れたように見えるけれど、再生抑制効果は小さくなります。
また、薬剤の量を増やすと葉や茎が枯れすぎてしまい、地下部への薬剤の移行がうまくいかないことがあるので、説明書に書かれた薬量を守ることが大切です。
土壌処理剤
土壌処理剤は雑草が生えるのを抑える目的で使用します。
冬に散布すると翌春の萌芽が抑えられます。
私は植栽の陰で見えない場所や塀などのキワに土壌処理剤を使っていますが、3月に撒いたところ初夏まで雑草が生えなかった(生えても大量ではない)ので、土壌処理剤をうまく使うと草取り手間がめちゃくちゃ減ります。
時間の経過とともに土壌処理剤の効果は減少していくので、雑草が目立つところや気になるところは、梅雨明け頃に再度撒くかどうか検討したほうがよさそうです。
土壌処理剤は土壌の表面処理のみを行うので、多くの土壌処理剤は地下部への効果は限定的です。
地下部への対策として、土壌混和処理(ジニトロアニリン系やクロロプロファム)が有効です。*1
多年生雑草におすすめの土壌処理剤
土がもっている湿気で粒が徐々に溶け出して、土壌の表面に近い部分に処理層をつくります。この処理層が雑草の発芽や根の生長を阻害することで、雑草が生えるのを防ぎます。
雑草ストレスを効果的に減らすコツは、適切なタイミングでの利用です。
粒状の土壌処理剤は土が湿っているときに散布するのが最適です。土が乾燥していると薬剤が飛散してしまうことがあるため、風のない日を狙いましょう。
土壌処理剤など粒状をした薬剤の散布に便利です。
フタの部分に穴が開いている散粒器も使っていますが、トレイがあるタイプはトレイ上で粒剤が均一になるので無駄なく撒けるので、手放せません。
<参考>
*1.伊藤操子著『多年生雑草対策ハンドブック 叩くべき本体は地下にある』農文協、2021年
「著者らの生育調査によると、すべての種で地上部より地下部の量の方が多かったが、とくにスギナでは5倍以上となった。また、地下部の生長ピークは地上部より後に現れた。これは、地下部へと養分が送られるのが、地上部の生長によって光合成が十分盛んになった後になるからである。」(P12)